循環器睡眠時無呼吸グループ(睡眠時無呼吸症候群への取り組み)
睡眠時無呼吸症候群について
睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome; SAS)を含む睡眠障害は、以前は精神科、呼吸器内科、耳鼻咽喉科などにて治療、研究されてきた疾患であるが、近年、脳血管障害、心血管系イベントの発症リスクとしての睡眠時無呼吸症候群の重要性が認知されるようになり、さらには循環器疾患における睡眠障害治療ガイドラインが2007年に米国心臓協会、米国心臓病学会共同で、2010年には日本循環器学会他で発表され、現在では循環器内科での睡眠時無呼吸症候群の診断、治療が一般的なこととなってきました。
治療への取り組み
当部門講師である安達は日本心臓財団・日本心電学会海外留学助成、The American Physiological Society Perkins Memorial Fellowshipを獲得し、2008年から2010年まで米国ミネソタ州にあるMayo ClinicのCardiovascular diseases部門へ留学(図1、図2、図3)。循環器睡眠時無呼吸症候群、睡眠不足、肥満に関する臨床研究に従事し2011年1月に帰国後、昭和大学へ復帰。
図1
図2
図3
2011年7月より入院棟15階、循環器病棟の個室1床を終夜睡眠ポリグラフィー(polysomnography; PSG)専用病床として改修し(図4、図5)、呼吸器内科の睡眠時無呼吸症候群診療グループと病床を共有し睡眠時無呼吸症候群の診断、治療を行っています。
図4
図5
治療について
具体的には、いびき、昼間の眠気、夜間頻尿、中途覚醒、肥満など自他覚所見がある患者さんに対してはもちろんのこと、高血圧(とくに治療抵抗性高血圧)、心筋梗塞や不整脈(心房細動、心室頻拍、洞不全症候群、房室ブロック等)の患者さんに対して睡眠時無呼吸症候群の診断、治療に介入しています。
治療は持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure; CPAP)が中心ですが(図6、図7)、口腔内装置(oral appliance; OA)の作成(図8、図9)も昭和大学歯科病院補綴科と連携をとって行っています。
図6
図7
図8
図9
重症心不全患者さんは中枢性睡眠時無呼吸症候群を合併することが多いため積極的に診断に介入しCPAP、サーボ制御圧感知型人工呼吸器(adaptive servo ventilation; ASV)(図10)を使用し治療を行っています。
図10
現在行っている研究は「慢性心不全におけるASVの運動耐容能、自律神経機能、血管内皮機能改善効果に関する研究」、「ICD/CRT-Dに搭載された睡眠時無呼吸症候群検出機能APscanとPSGとの相関についての検討」、「心房細動に対するカテーテルアブレーション施行時の鎮静とSASとの関連性および洞調律維持に及ぼす影響についての研究」、「アプノモニターにより診断された睡眠時無呼吸症候群の有無が心不全に与える影響についての検討」を行っています。
今後の睡眠時無呼吸症候群の治療への取り組み
これまで循環器疾患の臨床研究は覚醒時の病態解析に多くの関心が向けられていましたが、心疾患患者さんの睡眠中に重要な病態が潜んでいる可能性が明らかになりつつあります。今後は循環器内科の他研究班はもちろんのこと他科、他大学とも連携をとり睡眠と循環器疾患に関わる病態解明に貢献していきたいと考えています。