発作性上室性頻拍に対するアブレーション
房室リエントリー性頻拍
ケント束と正常な電気の流れ近傍(房室結節)をまわる
房室結節リエントリー性頻拍
正常な電気の流れ近傍(房室結節)周囲をまわる
心房頻拍(心房の中を旋回)があり、房室リエントリー性頻拍が一番多いです。突然、頻脈がおこり、脈拍が120-200bpmとなり、突然、停止します。長く続く場合は、失神や心不全をおこす場合があります。
1.房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)
心房と房室結節を結んでいる伝導路は2本から3本あり、この伝導路のうち速伝導路と遅伝導路といわれるものを介して房室結節の間で電気の流れがぐるぐる回り、心室に伝達され頻拍となる。
2.房室リエントリー性頻拍(AVRT)・WPW症候群
心房と心室間に先天的に余分な伝導路 (副伝導路:Accessory Pathway) があるために、この副伝導路を介して、心房と心室間をぐるぐる回る電気の流れにより、様々な瀕脈性不整脈 (房室回帰性頻拍:AVRT) が生じます。
3.心房頻拍
上記1,2以外の右心房をリエントリー(回る)頻拍です。
右心房内の頻拍の原因部位を特定し、治療を行います。左心房内の頻拍である場合は、後日、心房細動アブレーションにと同様な方法で、治療します(大がかり)。
カテーテルアブレーションで完治可能です。房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)は治療部位が正常伝導の部位に近いので最小限の治療となるので、ごくまれに再発することがあります。その際は、再度アブレーションを行います。
血管内穿刺
左または右肩、両側鼠頸部からカテ―テルを入れるシース(プラスチックの管)を静脈に4本、動脈に1本いれます(場合によって異なる)。
その後、カテーテルを留置後(右心房、冠状静脈、右心室)、不整脈の起こっている場所を治療します。左心室に治療部位がある場合は動脈から、または卵円孔(心房の薄い膜)を刺し、治療することがあります。対象不整脈、治療中の状況により、アブレーションの方法を変更します。
合併症
- 心タンポナーデ(心臓の外に血がもれ出る)→心臓の外から管をいれ、血液を抜きます。必要時輸血を行い、それでも出血する場合、心臓外科に開胸し、止血してもらいます。
- 脳梗塞(左心室起源の場合)→術中大量の抗凝固薬を注射します。
- 体内の出血→適時、外科的処置を含め検討。
- 創部の皮下出血(穿刺部にはほぼ必発)→数週間でなおります。
- 血気胸(、鎖骨下静脈穿刺時(肩から管をいる)に肺を傷つけてしまう)→肺を拡張するための、管を入れます。それでも治らない場合、外科処置が必要になります。肺の出血がある場合、輸血も必要となることがあります。
- 発熱→適時抗生剤を投与します。
- 完全房室ブロック(AVNRTの場合、正常伝導の近くが治療対象なので起こる場合が、あります。)→ペースメーカーの植え込み
渡辺 則和