虚血性心疾患グループ

虚血性心疾患グループのご紹介

当院では、狭心症, 心筋梗塞, 閉塞性動脈硬化症の患者様に対し経験豊富なスタッフのもと、急性期の診断、治療から社会復帰に至るまでの慢性期ケア、再発予防を目的とした外来管理と幅広く高度な医療を実践しています。

心電図や心臓超音波検査などの一般的な検査で総合診断を行い、さらに精密な検査を必要とする場合には、256列マルチスライスCT、心臓核医学検査および心臓カテーテル検査を実施しています。診療にあたっては患者様のご要望を積極的に取り入れ、診断方法や治療方針の決定にはわかりやすい説明を心掛けています。また、当院での心臓カテーテル検査は土曜日も行えるため、休みを取りづらい患者様にも大変好評です。

年間800件以上の心臓カテーテル検査(2019年度は820件、2018年度は835件)と年間500件以上の冠動脈インターベンション(2019年度は521件、2018年度は555件)を施行しています。尚、当院の冠動脈インターベンションは難易度の高い症例を多数含んでいます。

当院の特色として、急性心筋梗塞や不安定狭心症などの緊急を要する患者様の治療に対して、常に循環器専門医が病院内に待機するシステムを取っています。そのため、24時間いつでも、冠動脈インターベンション治療を実践しています。

当院は高度に石灰化した冠動脈の内面を削る高速回転式冠動脈アテレクトミー(ロータブレーター, 2019年度44件)やダイアモンドバック、また方向性冠動脈アテレクトミー(DCA)やエキシマレーザー冠動脈形成術(ELCA)といった特殊なカテーテル治療も施行可能な施設です。長い年月詰まったままの血管(慢性完全閉塞病変CTO)など難易度の高い病変に対する冠動脈インターベンションでも高い成功率をあげています。

以上のように当院では、緊急症例や難しい症例など、経験豊富なスタッフのもと積極的に受け入れて治療しています。

カテーテル検査・治療 年間症例数

2015 2016 2017 2018 2019
冠動脈造影検査
( CAG )
694件 712 789 835 820
経皮的冠動脈形成術
( PCI )
491 461 576 555 521
緊急PCI 169 124 140 140 135
ロータブレーター 35 36 37 42 44
下肢末梢血管形成術
( EVT )
40 48 90 122 118

当院で施行可能な特殊カテーテル治療

ロータブレーター、ダイアモンドバック

冠動脈の狭窄に対するカテーテル治療を行う上で最も重要なことの一つが、ステント(冠動脈の中に留置する金網)をしっかりと拡張することです。十分な拡張が得られないと、ステント血栓症という致死的な合併症やステント留置部位が再度狭くなる再狭窄のリスクが高くなります。通常の病変であればバルーン(風船)で拡張することによって、ステントを十分に拡張することができますが、動脈硬化が進み石灰化が強くなった病変では、バルーンだけでは十分な拡張を得ることができません。そのような時にロータブレーターや、ダイアモンドバックを用いた治療が有効になります。

ロータブレーター

先端のドリル部分にダイヤモンドが埋め込まれ、高速回転し、石灰化した動脈硬化を削り取っていきます。動脈硬化が石灰化して固くなると、通常のバルーンでは拡張が悪く、拡張が悪い状態でステントを留置してもステントそのものが十分に拡がらず、再狭窄の可能性が高くなります。こういった固い病変に対して、ロータブレーターが使用されます。

ダイアモンドバック

最近本邦にて使用可能となった高度石灰化病変に対する治療法として、
ダイアモンドバック(Diamondback)という機器を用いた高速回転式経皮的冠動脈形成術があります。ダイアモンドバックは先端から6.5mmのところにクラウンと呼ばれるダイヤモンドで構成された部分があり、1分間に8万回または12万回の回転を行い、石灰化病変を削ることができます。
ロータブレーターとの違いとして、血管径2.5 mmから4.0 mmを1サイズのみで且つ6Fr※の小径のカテーテルで治療ができる特徴があります。病変に応じてロータブレーターとの使い分けを行っています。
※Fr:フレンチスケール(カテーテルの外径を示す単位)/6Fr=2mm

これらロータブレーターや、ダイアモンドバックを用いた冠動脈の治療はどこの病院でもできるわけではなく、一定症例数以上のカテーテル治療を行っていることや一定症例数以上の手術を行っている心臓血管外科を有していることなどの施設基準があります。

エキシマレーザー

エキシマレーザー冠動脈形成術(ELCA)とは、冠動脈に挿入されたカテーテルの先端から照射されるエキシマレーザーによって、閉塞した血管を開通させるという治療方法です。エキシマレーザーとはキセノンを媒質として発生するレーザー光で、この光照射を行うと分子結合が直接切断され、大きな分子が小さな分子へと変換されるという性質があります。エキシマレーザーを動脈硬化の起こった冠動脈に照射することによって、生体組織に熱損傷を起こすことなく病変組織を蒸散させることができるという原理になっています。
ガイドワイヤーを通じて 、レーザカテーテルを病変部に導入

エキシマレーザを照射

レーザ照射後のイメージ

レーザー冠動脈形成術は、欧米ではすでに数万例の症例に適用され、通常の風船によるバルーン治療が困難な複雑病変に対する有効性が報告されています。日本では2012年5月からようやく保険償還されることになりました。対象としては通常の冠動脈治療が困難な慢性完全閉塞、分岐部病変、急性心筋梗塞、ステント内再狭窄であり、従来の風船などを使用する治療に比べて、安全性が高いといわれています。

また、従来ロータブレーター(血管内高速回転アテレクトミー)が石灰化の強い病変には有効とされてきましたが、このエキシマレーザーも同様に石灰化病変に有効性が高いとされています。エキシマレーザーを活用することで従来よりも治療の選択肢が拡がり、さらに有効性の高い医療を安全に提供できると考えています。

DCA(方向性冠動脈粥種切除術)

冠動脈のプラークを鉋(かんな)のように削り取るデバイスです。DCAは血管の中を直接カッターで削る手法であるため、血管の外形に変化は起こりません。

ステント留置の場合は金属を体内に入れるので、治療後に長期間抗血小板薬を服用する必要があります。DCAの場合は直接プラークを削るので、体内に金属が残ることはありません。しかし、DCAで使用するカテーテルは通常の治療に用いられるものよりも硬くて太いため、適応できる病変部は限定されています。全ての患者様にDCAを用いた治療ができるわけではありませんが、DCAを施行できる病変であれば、ステントを留置せずに治療できるというメリットがあります。

当院はこれらの施設基準を満たしており、必要な症例に対して積極的に施行しています。また、様々な道具が使えることで、個々の患者様に対して、適切で安全な治療方法を提供することができます。