特発性心室細動

特発性心室細動とは何か?

sinsitusaidou_1心臓に器質的異常を認めない心室細動(突然死を引き起こす不整脈)のことを言います。これは器質的異常を認めないので、心臓超音波検査などではわからない異常が心臓にあって突然死を引き起こすものや全く原因がわからないものがあります。

今まで特発性心室細動と考えられていたものにはBrugada症候群、早期再分極症候群、先天性QT延長症候群、カテコラミン感受性多形性心室頻拍、QT短縮症候群、不整脈原性右室心筋症、Short-coupled variant of torsade de pointsなどがありますが、最近では研究の進歩によって原因がある程度分かってきているものもあります。例えば、後述するBrugada症候群では、右室のイオンチャンネル病(Brugada症候群の頁を参照してください)であろうと現在は主に考えられています。

1.Brugada症状群

Brugada(ブルガダ)症候群とは?

心室細動という突然死を起こす不整脈の疾患です。Brugada兄弟の報告によって認知されたのでこの名称が使われています。日本人には比較的多く“ぽっくり病(朝起きたら亡くなっていた・・)の一部がこれだと考えられています。

Brugada症候群の診断は?

心電図でまずは診断します。心臓は心筋という細胞の集まりですが、心筋細胞には色々なイオンチャンネルという電気のバランスをとっている機能があります。右室で、その電気的なバランスが何かしらの影響で崩れると心室細動という致死性不整脈を起こします。具体的には心電図でここに示すような波形(特にCoved type型)が認められた場合をBrugada症候群と診断しています。薬剤による誘発のテストで、このタイプの心電図が認められた場合もBrugada症候群と診断されます。
心筋の電気的バランスに影響を与えるものには、性別と年齢:比較的若年者や壮年~中年の男性に多い疾患ですが男性ホルモンとの関連も報告されています。

電解質:血液中のナトリウム、カリウムやカルシウムなど。
遺伝的要素と家族歴:遺伝子の異常は30%ほど報告されています。
自律神経:交感神経と副交感神経という自分では制御できない神経システムで心臓は脈や収縮を調節したりしています。
・・などがいわれてます。その他、薬剤によるもの、冠動脈疾患などの他の心疾患によって二次的にBrugada症候群を引き起こすこともあります。このように様々な要因によって心室細動が引き起こされると考えられています。

では、Brugada症候群と診断されたら、皆突然死の危険があるのか?どのくらい危険なのか?

この答えはとても難しいのが現状です。なぜなら、現段階でこの疾患について全てが分かっているわけではなく研究段階の部分もあり、また前述のように色々な要因が関係しています。実際にBrugada症候群と診断された患者さんの中で、心室細動という突然死の原因となる不整脈を発症される方はごく一部の方のみです。

sinsitusaidou_2では、どうやって、個々の患者さんの危険度合いを評価するのか? これは日本循環器学会、不整脈学会などの専門医の医師によるガイドラインによって決められています。実際は、まだガイドラインの見直しが何年かに一度行われているのが現状ですが、心電図でType 1波形(前述のCoved type型の波形をいいます)を示し、突然死の家族歴がある場合(特に45才以下)、心臓電気生理学的検査(入院してカテーテルを用いて不整脈の起こりやすさを評価する検査です)で致死性不整脈が誘発された場合などで評価しています。

Brugada症候群の治療

上述の評価の方法を用いて、致死性不整脈の発症の可能性があると考えられた場合は植え込み型除細動器という電気ショックのかかる器械をペースメーカーのように植え込む手術を行います。例えば、すでに心室細動という突然死の原因となる不整脈をすでに一度でも自然に日常生活で起こしてしまったことがある方は極めて危険であり直ちに適切な治療が必要です。また、一度でもType1心電図波形を認めたことがある、突然死の家族歴がある、心臓電気生理学的検査で致死性不整脈が誘発される、失神の既往がある場合では、個々の患者さんによって専門医が適応を考えたうえで同様の手術が必要となる場合があります。その他、薬物治療として、内服薬を定期的に服用して発作の予防を抑えたり、致死性不整脈が止まらない重症例では点滴を使って治療することもあります。

このように、突然死の予防は必須ですが、一旦、Brugada症候群と診断された患者さんの中には経過を追っていくと他の疾患を合併したり、心機能が低下して心不全を来す場合もあります。よって、心電図や心臓超音波検査などで、経過を見ていく必要のある場合があります。

2.早期再分極症候群

早期再分極症候群とは?

早期再分極とは、心臓の再分極(収縮したあとに元の状態に戻るまでの回復過程)が早くはじまることをいいます。診断は心電図でします。この再分極が早くはじまることで心筋の電気的なバランスが不安定になり心室細動という突然死を起こす不整脈が起こりやすくなることがあります。

以前はアスリートに多く、良性と考えられていましたが、最近では突然死を起こすことがあることがわかり、この疾患の研究も進んでいます。しかし、健常人の数パーセントでも心電図で早期再分極が認められ、どのような患者さんで危険なのか、突然死を引き起こすのかは現時点ではよくわかっていません。

現在、言われているのは、突然死をした家族歴があること、失神をしたことがあることなどが危険因子と考えられていますが、まだまだ研究段階でありますので、この疾患につきましては、主治医か当科専門医にお尋ねください。

昭和大学内科学講座 循環器内科
循環器専門医・不整脈専門医 小林洋一講師 箕浦慶乃 他